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日本国憲法28条の「勤労者」

更新日:6 日前

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労働基本権を定める日本国憲法28条の「勤労者」とは誰のことをいうのか。それは雇用された労働者のことだ、というのが日本の団結権立法史を踏まえて戦後労働法学において共有されてきた一般的な理解であった。このほぼ自明視されてきた理解が、今大きく揺らいでいる。


 フリーランスなど雇用によらない働き方をする人々の存在に注目が集まるなか、雇用労働と自営業の間にあった境界の自明性が消失しつつある。目下進行中のプラットフォーム経済、A Iの破壊的とも言える影響は、20世紀の経済社会における各種の自明性を次々と解体し始めている。


 実は、法解釈学における認識とは相対的に独自に、戦後ある時期までには、日本国憲法28条の勤労者概念、あるいは労組法における労働者について、失業者のほか、小作農民や個人自営業者も排除されないとの理解も有力に存在した(沼田稲次郎『日本労働法論・上』1948年、同『労働法論・上』1960年)。


 実定法解釈とは位相を異にする実践哲学をベースとした沼田の法科学的な嗅覚は、現代労働法の生成・確立期である20世紀の労働法のみならず、さらにその動揺と解体の21世紀の労働世界にまで射程が及んでいたのかもしれない。


 ちなみに沼田は、1951年の著作において、民主主義の徹底による階級支配の終わりとともに訪れる『法と国家の死滅』について考察を巡らせている。




 
 
 

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yonezu takashi
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